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誤嚥性肺炎を起こした犬の経過と臨床検査所見に関する研究

投稿者:武井 昭紘

誤嚥性肺炎(Aspiration pneumonia、AP)は、異物が気道に入って肺における細菌感染が生じた状態で、身体検査、X線検査、細胞診、細菌培養検査の結果に応じて診断され、抗生剤によって治療されることが通例である。だが、後二者の検査は、時間やコストを要するとともに検査までの流れが煩雑であるため、全症例で実施されていないのが現状である。また、院外で日常生活を送っていたヒトに起きる肺炎(community-acquired pneumonia (comAP)の治療を参考にすると、X線検査所見による治療効果判定は推奨されておらず、急性期タンパク質の変動をもって、抗生剤の投与期間を決定しているようなのだ。

 

そこで、欧米の大学らは、入院加療となったAPの犬を対象にして、①入院時、②診断から2週間後、③1ヶ月後における胸部X線検査所見(chest radiographs、CXR)、肺の超音波検査所見(lung ultrasound、LUS)およびC反応性タンパク質(C-reactive protein、CRP)濃度のデータを解析する研究を行った。なお、CXRでは片側の肺野(ラテラル)を9分割して、左右で計18ヶ所の画像データが、LUSではBライン、shred sign(萎縮・虚脱によって実質臓器のようになった肺の細気管支に空気が残り、胸膜ラインがシュレッダーにかけられたようにズタズタに見えること)などの有無がチェックされ、肺の状態がそれぞれ6段階でスコア化されている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆誤嚥性肺炎を起こした犬の経過と臨床検査所見◆
・①おいて症例の90%でCXRに異常を認めた
・①において約82%の症例でBライン、約94%でshred signが確認された
・①から③へと経過することに応じてスコアが低下していく傾向があった(症状が軽度になっている)
・③の時点でshred signは症例の約83%で消失した
・しかし、CXRの異常とBラインは症例の約67%で残った(③の時点)
・一方、臨床症状とCRPは全ての症例で正常化した(③の時点)

 

上記のことから、CXRによる治療効果判定は信憑性に欠け、CRP(急性期タンパク質)の変動による判定が優れていることが窺える。また、LUSも同様の印象を受ける。よって、今後、CRPと臨床症状のモニタリングによって、APの犬の経過を正確に把握するための治療効果判定法が考案されることに期待している。

shred signを認める画像データにつきましては、リンク先の論文をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jvim.16379


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