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テトラヒドロキシ胆汁酸~肥満の猫におけるインスリン抵抗性を改善する効果の検証~

投稿者:武井 昭紘

肥満はインスリン抵抗性を引き起こし、猫の糖尿病の発症に深く関与する。しかし、その肥満と、肥満に伴うインスリン抵抗性を予防する方法は充分に確立されていない(無論、食べ物を与え過ぎないというオーナーの意識は必要だろう)。一方、レチノイド関連オーファン受容体ガンマ(RORγ)はヒトおよびマウスにおけるインスリン抵抗性脂肪細胞の発達に関与するされ、この受容体のリガンドであるテトラヒドロキシ胆汁酸(tetra-hydroxylated bile acid、THBA)は「その発達」を阻害する可能性があることが、マウスの研究で示されている。そこで、疑問が浮かぶ。健康な猫や糖尿病の猫にTHBAを補給すると、一体どのような変化が生じるのだろうか。そして、その変化は、糖尿病管理あるいは肥満の防止に有用な治療法の確立に大きなヒントを与えることになるだろうか。

 

そこで、ヨーロッパの大学らは、臨床上健康な猫と糖尿病の猫を対象して、THBA(5 mg/kg)を投与するとともに、彼らの血液性状および脂肪細胞の状態を調べる研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆糖尿病の猫に対するTHBAの効果◆
・THBAの投与によって摂食行動、全身状態、血液性状(空腹時の血糖値など)は悪影響を受けない
・脂肪細胞のサイズが有意に減少した
・脂肪細胞におけるマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP3)、IL-6、TNFαのmRNA発現は有意に減少した
・脂肪細胞におけるアディポネクチンのmRNA発現は有意に増加した
・RORγとレプチンのmRNA発現は変化しなかった

 

上記のことから、THBAは、猫に摂食時のストレスを与えることなく、且つ、安全に脂肪細胞の発達を抑える効果を発揮できることが窺える。よって、今後、THBAの投与によって糖尿病の猫のインスリン抵抗性や肥満が解消されるか否かについて検証され、THBA療法が確立されることを願っている。また、動物用のTHBA製剤が製品化されることに期待している。

本研究には、臨床上健康な猫と糖尿病の猫が13匹ずつ参加しております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35366568/


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