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僧帽弁形成術を受けた心臓病の犬におけるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の変化を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

一次診療施設でも良く遭遇する僧帽弁疾患(myxomatous mitral valve disease、MMVD)を抱える犬の体内では、心臓内の血流、引いては、全身への血流が変動し、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(renin-angiotensin-aldosterone system、RAAS)の変化に伴った血圧の上昇が現れる。そして、この血圧の上昇が、更なる血流の悪化を生み出すことになるのだ。そのため、悪循環を断ち切るべく、大元の原因である僧帽弁の粘液腫様変性を治療する、即ち、僧帽弁形成術(mitral valvuloplasty、MVP)の適応が検討されるのである。しかし、MVPを受けた犬のRAASについての情報は乏しい。そこで、疑問が浮かぶ。果たして、MVPはRAASを正常に近い状態へと復帰させることができているのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、エジプトおよび日本の獣医科大学らは、MVPを受けたMMVDの犬8匹を対象にして、術前と術後1ヶ月〜3ヶ月における血液検査および心エコー図検査の所見を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆MVPが齎すRAAS への影響◆
・LVIDDN、LA / Ao、FS、E / Aなどの超音波検査項目が有意に低下した
・血漿中レニン活性、アンジオテンシンII濃度、アルドステロン濃度が有意に低下した
・BUNとCREは術後1ヶ月目にして低下した

 

上記のことから、MVPは、MMVDの犬が陥る「悪循環」を断ち切る効果を有することが窺える。よって、今後、本研究で採用された検査項目を用いた経過観察の方法が体系化され、MVPを受けた犬の術後モニタリングが安定した確かなものになることを期待している。

心エコー図検査で確認された項目の詳細は、リンク先の文献をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34994485/


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