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急性熱性好中球性皮膚症(スウィート症候群)を発症したマルチーズの1例

投稿者:武井 昭紘

皮膚病を主訴にして、5歳齢のマルチーズ(去勢オス)が動物病院を訪れた。全身に痂疲が認められ、四肢に多くのびらんと局面を抱えていた。そして、その症状は2ヶ月間継続していたという。病歴・予防歴を見る限り、外部寄生虫の予防をしており、アトピー性皮膚炎、食物有害反応、薬疹を治療した過去はなかった。加えて、アモキシシリンクラブラン酸の2週間に渡る投与にも反応しない。彼の身に一体何が起こっているのだろうか。

皮膚病以外にも症状があった。元気・食欲は無く、発熱し、関節と体表リンパ節の腫脹が伴っていたのだ。更に、各種臨床検査にて白血球増加症(左方移動)、CRPの上昇、表皮から真皮に至る好中球の中程度~重度の浸潤が発覚し、SIRSの診断基準を満たしていた。一方、細菌や真菌の存在は否定的で、抗核抗体もリウマチ因子も確認できなかった。用量の調整をしつつ、プレドニゾロンの経口投与を続けて数ヶ月、皮膚病もSIRSも改善した。

これを受け、症例を報告したアメリカと韓国の獣医科大学らは、マルチーズを「急性熱性好中球性皮膚症」、いわゆる「スウィート症候群」と診断した。ヒトのスウィート症候群に類似する点が多いとのことだ。そして、同大学らは訴える。SIRSは時に致命的であると。ステロイドによる治療が遅れないように注意を払うべきだと。読者の皆様は、原因の掴めない発熱と皮膚病を呈した犬を診察したことはあるだろうか。もし、あるならば、スウィート症候群を鑑別に追加することをお薦めする。

本症例にはシクロスポリンが投与された時期もありましたが、そのタイミングで皮膚病が再発し、中止したとのことです。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.837942/full


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