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特発性てんかんの犬の血液および脳脊髄液を免疫学的に分析した研究

投稿者:武井 昭紘

一次診療施設でも良く遭遇する犬の特発性てんかん(idiopathic epilepsy、IE)において、一部の症例に抗てんかん薬が奏効しないことが知られている。そのため、これらの症例に対する有効な治療法を考案することが、獣医学の課題となっているのだ。一方、話は変わるが、①ヘルパーT細胞であるTh17細胞および②インターロイキン-17(IL-17)は、自己免疫性疾患に深く関与しているとされている。そして、中枢神経系に影響を及ぼす自己免疫疾患は、原因が特定されるまでの一時期、IEに分類されていた歴史を持っている。

冒頭のような背景の中、ドイツの獣医科大学は、難治性IEと①②の関連性を調べる研究を行った。なお、同研究では、IEの犬50匹以上と健康な犬10匹から採取した、脳脊髄液(cerebrospinal fluid、CSF)と血液サンプルの性状が解析されている。すると、IE症例の約18%で活性化したTh17細胞の数(> 100個/μL)が上昇し、その値が発作の重症度と僅かに正の相関関係にあることが判明したという。また、Th17細胞の数が上昇していない症例(< 100個/μL)の9%が群発発作または重積発作を経験しているのに対して、上昇している症例では「その割合」が40%にも達するとのことである。加えて、健康な犬と比べて、IEの犬のCSFおよび血液中のIL-17レベルは有意に高いことが明らかになった。

上記のことから、免疫細胞と炎症が一部のIE症例の病態に関連していることが窺える。よって、今後、難治性IEの犬に抗炎症薬や免疫抑制剤を投与する研究が進み、その有効性と安全性が検証されていくことに期待している。

抗炎症薬や免疫抑制剤を適応するべきIE症例を判別するための診断基準も確立されることを願っております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35025939/


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