ある報告によると肥大型心筋症の猫の約11%に起きるとされている動脈血栓塞栓症(arterial thromboembolism、ATE)は、罹患猫の病状を著しく悪化させることが知られている。そのため、抗血栓療法が重要視されており、ATEを発症するリスクがある症例にはクロピドグレルを投与し、そして、特に高いリスクを抱えている症例には第Xa因子阻害薬(リバーロキサバン)を併用することが推奨されている。しかし、この併用療法の安全性と有効性を調べた研究は見当たらないのが現状である。
そこで、カリフォルニア大学は、5年を超える期間に渡って併用療法を受けた猫30匹以上を対象にして、彼らの経過を分析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆二剤併用療法の安全性と効果◆
・ATE、心臓内の血栓、もやもやエコー(spontaneous echocardiographic contrast、SEC)を認める症例に同療法を適応した
・全症例の生存期間は中央値で257日であった
・ATE症例に限ると生存期間は502日であった(2肢以上にATEが発生した症例では725日、1肢のみにATEが発生した症例では301日)
・二剤併用療法中の再発率は約17%であった
・二剤併用療法中に新たなATEが発生した症例は居なかった
・治療開始から中央値13日目にして約16%の症例に副作用(鼻出血、吐血、血便、血尿)が発現した
・副作用を理由に入院を要する症例は居なかった
上記のことから、二剤併用療法は、副作用および再発のリスクを低く保ちつつ、ATEの治療に効果を発揮することが窺える。よって、今後、副作用の可能性を限りなくゼロに近付ける投与量を決める研究が進み、より安全な二剤併用療法が確立されることに期待している。
参考ページ:
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1098612X211013736