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猫の嚢胞腺腫症に関する疫学を明らかにした研究

投稿者:武井 昭紘

猫の嚢胞腺腫症(耳垢腺嚢腫)は、耳垢腺やアポクリン腺が関与する稀な皮膚疾患として知られている。それが故か、原因(発症要因)については、統一された見解が無いのが現状である。つまり、当該疾患の疫学を解明して原因を追求することが獣医学の課題と言えるのだ。

 

冒頭のような背景の中、アメリカの動物病院らは、マサチューセッツ州に拠点を構える高次診療施設における過去8年分の診療記録65000件以上(うち皮膚科は800件弱)を対象にして、嚢胞腺腫症の疫学を明らかにする研究を行った。なお、同研究では、生検組織が残る症例のPCR検査も実施されており、パピローマウイルスの遺伝子の検出が試みられている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆猫の嚢胞腺腫症に関する疫学◆
・当該疾患を発症した例は57件(耳の数にして105)であった
・そのうち50%弱で病理組織検査が実施されている
・7%の症例では眼や肛門周囲に嚢胞が確認されている
・短毛の猫が発症しているケースが多かった
・高齢の交雑種が発症しているケースが多かった
・メスと比べてオスは約2.2倍発症しやすい
・80%以上の症例が両耳に病変を抱えていた
・約12%の症例で悪性腫瘍が認められた
・PCR検査を実施した症例の約17%からパピローマウイルス2型の遺伝子が検出された

 

上記のことから、パピローマウイルスの関与は否定的である一方、前述した特徴を持つ猫たちが発症しやすいことが窺える。よって、今後、短毛種、オス、高齢で交雑種の猫と、それらに該当しない猫の嚢胞腺腫症を比較する研究が進み、発症要因が解明されることに期待している。また、その要因を基に、新しい治療法・予防法が考案されることを願っている。

本研究で認められた悪性腫瘍は、腺癌(炎症を伴う)、肥満細胞腫、扁平上皮癌だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34254846/


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