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問題行動に対する薬物療法を適応されやすい犬の特徴を明らかにした研究

投稿者:武井 昭紘

オーナーから見て望ましくない行動(Undesirable behaviours、UBs)、いわゆる「問題行動」は、犬を飼育する世帯で良く見られるトラブルである。そして、このトラブルは、オーナーと犬の双方に深刻な福祉上の影響を与えると言われている。つまり、両者が日常生活を共にする状況下において、犬のUBsは対処するべき(治療するべき)病気なのだ。では、問題行動に対する治療を適応されやすい犬とは、どのような特徴を有しているのだろうか。それを明らかにすることは、犬の行動学を発展させる上で重要なことだと言える。

 

冒頭のような背景の中、イギリスの大学らは、大規模臨床データベースVetCompass™に登録されている犬の診療記録10万件以上(2013年時点)から、問題行動を治療するべく薬物療法を適応された犬400匹以上を対象にして、彼らの特徴を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が判明したという。

◆問題行動に対する薬物療法を適応されやすい犬の特徴◆
・有病率は0.4%であった
・トイプードル、チベタンテリア、シーズーがリスクが高い犬種である(約2倍)
・3歳未満に比べて12歳以上の犬では約3倍、薬物療法を適応されやすい
・メスに比べてオスは1.5倍、薬物療法を適応されやすい
・体重はリスクファクターになっていない(ただし上記3犬種は体重が軽い)
・不妊去勢手術の有無はリスクを変動させない

 

上記のことから、オスであること、そして該当する犬種(トイプードル、チベタンテリア、シーズー)であることは、問題行動に対する薬物療法を適応されやすいファクターになっていることが窺える。よって、条件を満たす犬を飼育する世帯を担当する獣医師は、診察の度にオーナーの悩みや犬の様子を聴き取ることが大切だと思われる。また、初めて犬を飼育するというヒトには、オーナーと犬の福祉を考慮して、上記3犬種以外の犬またはメスを飼うことを提案することが良いのかも知れない。

本研究で対象となった診療記録において有病率が低いことに関し、最初に犬を診察した獣医師が薬物療法の必要性を認識していなかった可能性があると、大学らは述べています。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35020726/

https://www.rvc.ac.uk/Media/Default/VetCompass/Infograms/220127%20Undesirable%20Behaviour.pdf


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