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ホームレスが飼育している犬の福祉を考えたイギリスの研究

投稿者:武井 昭紘

「犬を飼う」という行為は、貧富の差に関係なく、世界各地に広まった共通の文化・習慣とも言うべきものである。そして、その「広まり」は、安定した住居を持たないホームレスにも及んでいる。しかし、「ホームレスが犬を飼うこと」に関しては、充分な世話(ケア)ができないだろうという憶測から批判が向けられることが珍しくないのだ。では果たして、実際のところは、どうなのだろうか。動物福祉の観点から、現状を把握する必要があると言える。

そこで、イギリスの大学らは、ホームレス19名が飼育する犬21匹を対象にして、彼らの健康と幸福度を評価する研究を行った。なお、評価方法には、チャリティ団体PDSA(People’s Dispensary for Sick Animals)が提唱しているPetwise MOT(P-MOT)が採用されている。すると、一部のホームレスは動物医療へのアクセスに苦労し、母集団の約62%は犬の行動について悩んでいるものの、運動やコミュニケーションについては一般的なオーナーと比べて遜色が無いことが判明したという。また、過体重・肥満の犬は居るが、その割合は一般的なオーナーが飼う犬よりも低く、瘦せている個体は確認できなかったとのことである。

上記のことから、問題行動を含めた犬の病気に関する相談窓口(動物病院ということになるだろうか)が用意されれば、彼らの福祉は悪化しないものと思われる。よって、今後、ホームレスへの動物医療サービスの提供について議論され、犬たちが健康に暮らせるシステムが構築されていくことに期待している。

ホームレスを悩ませる犬の行動で最も多いものは、分離不安症だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34402075/


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