ニュース

スパイクタンパク質を用いたSARS-CoV-2ワクチンの子猫に対する効果を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

2019年末からパンデミックを起こし、世界に脅威を齎した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して、現在、多くの「ヒト用」ワクチンが開発されている。しかし、犬猫にもSARS-CoV-2が感染するという現実を考慮すると、彼らにもワクチン接種が必要とされる時期が到来する可能性は否定できない。つまり、「犬猫用」のワクチンの開発が急務の課題なのだ。

そこで、アジアおよびヨーロッパの大学らは、昆虫由来の細胞に発現させたSARS-CoV-2のスパイクタンパク(組み換えタンパク)のサブユニットを含むワクチンを子猫に接種し、その効果を検証する研究を行った。なお、同研究では、8~12週齢の子猫16匹を4つのグループ(スパイクタンパクのみ接種、スパイクタンパクと2種類のアジュバンドのどちらかの組み合わせで接種、生理食塩水の接種)に分け、2週間間隔で2回、ワクチンが筋肉内投与されている。また、接種から4週間後、これらの子猫にはSARS-CoV-2(野生株)が鼻腔内投与されたという。すると、ワクチンを接種されたグループの血液中にスパイクタンパクをターゲットとしてIgG抗体が誘導されており、その抗体はSARS-CoV-2(野生株およびデルタ株)を中和する能力を有していることが判明したという。また、アジュバンドとともにワクチンを接種された子猫の組織サンプル(肺、心臓、鼻甲介)において、ウイルスの排出が促され、複製が阻止されていることが確認できたとのことである。

上記のことから、本研究で用いたワクチンには、子猫をCOVID-19から守る効果があると考えられる。よって、今後、成猫に加えて子犬・成犬に対する効果も検証され、ペット用SARS-CoV-2ワクチンの製品化に向けた動きが活発になることを期待している。

皮下注射で効果を発揮するワクチンが開発されると、小動物臨床では利便性が向上すると思われます。

 

参考ページ:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.815978/full


コメントする