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慢性腸症の猫が抱える腸内細菌叢の異常を数値化した研究

投稿者:武井 昭紘

テキサスA&M大学の研究によると、慢性腸症を抱える犬の腸内細菌叢にはdysbiosis(細菌の種類と数の減少)が起きている可能性があるという。では、このdysbiosisに陥った腸内の環境とは、一体どのようなものなのであろうか。「それ」を客観的に表現できれば、獣医師・動物看護師およびペットオーナー間での情報共有がスムーズになるものと推察する。

冒頭のような背景の中、アメリカの大学らは、①臨床上健康な猫と②慢性腸症の猫、合計で140匹以上を対象にして、dysbiosisを数値化する研究を行った。なお、同研究では、腸内細菌叢全体と、バイクテロイデス属、ビフィズス菌、Clostridium hiranonis、大腸菌、フィーカリバクテリウム属、レンサ球菌、Turicibacter属に着目したquantitative PCR (qPCR) によって、dysbiosis指数(dysbiosis index、DI)が算出されている。すると、①よりも②のDIが有意に高く、カットオフ値を0に設定すると感度77%、特異度96%の精度になることが判明したという。また、②の約76%はDIが0を上回ることが分かったとのことである。

上記のことから、DIは、②に起きているdysbiosisを数値化できる手法だと言える。よって、今後、感度を向上させる方法を考案するとともに、臨床現場で慢性腸症と診断、または、疑われている猫のDIを調べる研究、DIを慢性腸症の犬に適応する研究が進み、DIの有用性が評価されていくことに期待している。

DIの算出方法は、リンク先の文献をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35266809/


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