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頚胸部に腫瘍が発生した猫に起きた高カルシウム血症

投稿者:武井 昭紘

5歳の猫(去勢オス)が、体重減少を伴う食欲不振と嘔吐という主訴で、ニュージーランドの動物病院を訪れた。関節の動きを制限するのではと心配できる程に大きな腫瘤が、頚部と胸部の2ヶ所に存在していた。4ヶ月と少し前に、その異変は始まったらしい。血液生化学検査では、高コレステロール血症と高カルシウム血症が認められた。そして、何ヶ月と経過した後の再診。イオン化カルシウムの上昇が明らかとなり、シュウ酸と思しき結晶が尿中に出現していた。腫瘤内部から吸引した液体は血液が混ざった膿性であるものの、培養の結果は陰性であった。

切除生検が行われた。病理組織学的検査にて、皮膚に発生したキサントーマ(黄色腫)と判明。術後、カルシウムの値は正常化したものの、高コレステロール血症は持続したため、脂質を制限した食餌で治療を進めたという。手術から8ヶ月、罹患猫のQOLも代謝も改善され、再発は起きなかった。

症例を報告した動物病院は、家族性と疑われる高コレステロール血症(原発性の脂質異常症)がキサントーマおよび高カルシウム血症を発生させ、病変が肉芽腫性炎症に発展することに寄与したと述べている。果たして、原因不明の高カルシウム血症を抱えている猫のうち、キサントーマを発症している個体はどれくらいの割合に達しているのか。今後、その有病率を算出する研究が進むことに期待している。

術後の高コレステロール血症には、トリグリセリドの上昇は伴わなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/20551169221082050


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