ニュース

細菌性の尿路感染症と診断された猫に処方された抗生剤に関する調査

投稿者:武井 昭紘

細菌性の尿路感染症には、通常、抗生剤療法が適応される。しかし、世界的に薬剤耐性菌が蔓延る現代においては、その適正な使用を議論する必要がある。そのためには、まず現時点での使用状況を把握すること。それが、非常に重要なことと言えるのだ。

 

冒頭のような背景の中、カナダの獣医科大学およびアメリカの動物病院グループらは、北米の動物病院に協力を仰ぎ、猫の細菌性尿路感染症に関する約3年間分(2016年1月2日~2018年12月3日)の診療記録を解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆北米における抗生剤の使用状況~猫の細菌性尿路感染症編~◆
・抗生剤の処方は5700件以上に昇る
・88%の症例は散発性膀胱炎であった(残りの約9%は腎盂腎炎、約3%は再発性膀胱炎)
・セフォベシンが最も一般的に使用された抗生剤であった
・次いでアモキシシリンクラブラン酸が続いた
・セフォベシンの使用が減少傾向にあり、アモキシシリンクラブラン酸の使用が顕著に増加していた
・フルオロキノロンの使用も増えていた

 

上記のことから、僅か3年間であっても、猫の細菌性尿路感染症に対する抗生剤の使用状況は刻々と変化していることが窺える。果たして、この変化は、耐性菌の出現と関係があるのだろうか。あるいは、他の要因が「そう」させているのだろうか。今後、使用状況を変化させるファクターの解析が進み、抗生剤の乱用や耐性菌の出現を防ぐ対策が考案されることに期待している。

犬よりも細菌性膀胱炎になりにくい猫が当該疾患を発症した理由についても検証されると、抗生剤との付き合い方を見直すヒントが得られるかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34709080/


コメントする