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下痢を呈する猫1600匹以上から検出される病原体を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

猫の下痢症は、一次診療施設で頻繁に遭遇する病気で、細菌、寄生虫、ウイルスなどの様々な病原体によって引き起こされることが知られている。そのため、これらの病原体による下痢症の有病率、複数の病原体による感染状況、季節性など疫学をアップデートすることは、大変に重要なことであると考えられる。

 

そこで、ソウル大学校らは、下痢を呈した猫の糞便サンプル1600件以上を対象にして、リアルタイムPCRによる病原体の検出を試みする研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆下痢を呈した猫の糞便サンプルの解析結果◆
・約83%のサンプルから病原体が検出された
・サンプルの約49%から細菌、37%からウイルス、13%から原虫が検出された
・単独感染が約35%、混合感染が10%、重複感染が54%を占めていた
・猫腸コロナウイルスが最も一般的であった(サンプルの約30%)
・次いでウェルシュ菌、カンピロバクター、ネコパルボウイルス、トリコモナスが続く
・細菌による感染は10月、ウイルスは11月、原虫は8月がピークであった

 

上記のことから、猫の下痢症には季節性があり、病原体により「その季節」が異なることが窺える。また、猫腸コロナウイルスを筆頭として、細菌、寄生虫、ウイルスの何れでも一般的な病原体が存在していることが分かる。よって、本研究のデータが臨床現場で活かされることを願うとともに、季節性(ピークがあること)の原因を解明する研究が進み、予防対策が考案されることを期待している。

単独感染の主な病原体は猫腸コロナウイルス、混合感染はウェルシュ菌とカンピロバクター、重複感染はウェルシュ菌と猫腸コロナウイルスであることも分かっております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34852811/


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