ニュース

温暖化が進む地球上で考える動物の熱中症

投稿者:武井 昭紘

20℃を超える日、あるいは、30℃にも迫る日が増えてきた現在、その温かさ(熱さと言うべきか)に影響され、ヒトでもペットでも熱中症が心配される季節を迎えた。そして、世は地球温暖化が危惧される時代である。そこで、ふと疑問が浮かぶ。地球規模で気温が上昇することは、ペットの熱中症に何らかの影響を与えているのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、イギリスの大学らは、地球温暖化と動物の熱中症との関連性に着目して、コンパニオンアニマルが熱中症に陥りやすくなる危険因子について研究を行った。なお、彼らのデータは、小動物臨床に纏わる調査をするためのネットワーク(Small Animal Veterinary Surveillance Network、SAVSNET)を介して、英国全土から集められている。調査期間は2013年~2018年。以下に示す事項が明らかになったという。

◆コンパニオンアニマルが熱中症に陥りやすくなる危険因子◆
・170件を超える症例が集まった(犬、猫、モルモット、ウサギ、フェレット)
・犬の熱中症の約74%は運動が原因であった(次いで車内への閉じ込めが約7%)
・犬の熱中症の約19%は環境因子(地球温暖化を含む周辺環境の温度上昇)が原因であった
・猫、モルモット、ウサギ、フェレットの熱中症の全ては環境因子が原因であった
・犬の熱中症の約21%とウサギの全例は短頭種で起きていた
・犬の熱中症は4月~10月(症例の約43%が最も熱い7月)、猫の熱中症は5月~9月(症例の75%が6月~7月)に起きていた
・モルモット、ウサギ、フェレットの熱中症は6~8月に起きていた

 

上記のことから、犬の熱中症は主に運動が原因で、猫、モルモット、ウサギ、フェレットの熱中症は環境因子が原因であることが分かる。よって、犬の熱中症を防ぐには「気温が高い日中の散歩を避けること」、他のコンパニオンアニマルの熱中症を防ぐには「周辺環境の温度を下げること」が大切だと考えられる。桜の開花宣言、お花見の情報が飛び交い始めた3月末。大型連休が目前となり出掛ける計画に心が躍る4月末。犬や猫の熱中症が報告される時期(初夏)に差し掛かっている。これから夏が終わるまでの半年余り、どうか愛犬の熱中症には充分に気を付けて欲しい。また、梅雨を迎える頃には、猫、モルモット、ウサギ、フェレットを飼育している世帯でも熱中症に注意を払って頂けると幸いである。

『ペットが熱中症になったのでは』と少しでも心配になった場合は、躊躇せず動物病院を訪れましょう。

 

参考ページ:

https://www.openveterinaryjournal.com/OVJ-2021-07-140%20E.J.%20Hall%20et%20al-1.pdf


コメントする