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副腎皮質機能低下症を高い確率で診断する尿検査に関する研究

投稿者:武井 昭紘

時に罹患した犬を死に至らしめる副腎皮質機能低下症(hypoadrenocorticism、HA)は、血清中コルチゾール濃度を中心として、臨床症状および臨床検査所見を総合して診断される。しかし、同濃度が低い(2μg/dL以下)ことを診断根拠とした時、その特異度は20~78%に留まることが現状である。そのため、ACTH試験の必要性を検討することになるのだが、そこには「費用と時間が掛かる」という壁が立ちはだかるのだ。

冒頭のような背景の中、ヨーロッパの大学らは、この費用と時間を抑えるべく、単一のサンプルで検査が進められる尿中コルチゾール/クレアチニン比(urinary corticoid:creatinine ratio、UCCR)を用いて、犬のHAを診断する方法を模索する研究を行った。なお、同研究には、①臨床上健康な犬19匹、②HAに類似した臨床症状を呈する疾患を持つ犬18匹、③HAの犬10匹が参加している。すると、①に比べて③のUCCRは有意に低く、その値は②のUCCRとオーバーラップしないことが判明したという。また、「1.4未満」というカットオフを設定すると、UCCRによるHAの診断は感度100%および特異度97%になることが分かったとのことである。

上記のことから、UCCRは、犬のHAを診断するスクリーニング検査として有用であることが窺える。よって、今後、症例数を増やした同様の研究が実施され、特異度を更に向上させる方法が検討されることに期待している。そして、費用対効果が高い犬のHAに対する診断法が確立することを願っている。

①に属する犬のうち1例において、UCCRが③の範囲に一致することが確認されたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35150029/


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