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救急疾患として受け入れた呼吸困難を呈する猫が下部気道疾患と診断される確率

投稿者:武井 昭紘

呼吸困難を呈した猫が、救急外来を訪れた。原因は何であろうか。感染症、呼吸器の炎症、腫瘍、外傷、胸水、心臓病etc。全てを鑑別するためには、一定の時間と費用(検査)を要する。僅かであっても、その鑑別が楽になる方法はないものであろうか。

 

冒頭のような背景の中、ペンシルバニア大学の研究を見付ける。同大学は、呼吸困難の猫170匹以上を対象に、彼らのシグナルメント、病歴、検査所見を解析して、炎症性の下部気道疾患(inflammatory lower airway disease、ILAD)と診断される可能性を高めるファクターを特定する研究を行ったという。そして、以下に示す事項を突き止めた。

◆呼吸困難を呈する猫が下部気道疾患と診断される確率◆
・①咳の病歴、②呼吸数の増加、③複式呼吸、④胸水が認められないことがファクターであった
・①と③を認めた場合、ILADと診断される可能性が約6~8倍高くなる
・②について、1分間の呼吸数が10増える度にILADと診断される可能性が1.48倍高くなる
・④について、胸水の所見によってILADと診断される可能性が約7倍低くなる

 

上記のことから、前述した4つのファクターがILADと診断される可能性を左右していることが分かる。よって、呼吸困難を呈した猫を診察する際は「これらの」所見の有無を一早く確認してILADの可能性を判定することが、鑑別診断の効率化に繋がるものと思われる。

本研究では、ILADの猫(54例)の生存率が94%、ILADではない猫(121例)のそれが61%であることも判明しています。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33645320/


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