好中球/リンパ球比(neutrophil to lymphocyte ratio、NLR)は、悪性腫瘍を抱える犬や猫の予後を判定する有用なマーカーとして注目を浴びている。つまり、NLRの変動が、彼らの経過・転帰を暗示する指標なのだ。とここで、一つの疑問が浮かぶ。では、このNLRは、悪性腫瘍の症例のみで利用できるものなのだろうか。それとも、他の疾患でも活用できるものなのだろうか。
冒頭のような背景の中、トルコの獣医科大学は、急性下痢(acute diarrhea、AD)を呈した2~6ヶ月齢の子犬を対象にして、彼らの予後、下痢の重症度(canine acute diarrhea severity index、CADSI)、NLRを記録し、データの解析をする研究を行った。すると、NLRの値は健康な子犬よりもADの子犬で有意に高く、NLRとCADSIは正の相関関係にあることが判明したとのことである。また、ADの子犬のNLRは、全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome positive、SIRS)を伴うことで、有意に上昇することも確認されたという。
上記のことから、NLRは、子犬のADの重症度を把握するマーカーとして有望であることが窺える。よって、今後、ADの重症度と死亡率との関連性を調べる研究が進み、NLRが子犬のADに対する予後判定マーカーとして確立することを期待している。

ADの犬と健康な犬の白血球数(WBC)には、有意差が認められなかったとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34800354/