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猫が発症する非神経原性の尿失禁に関する疫学について調べた研究

投稿者:武井 昭紘

尿失禁(トイレではない場所で尿を漏らすこと)。それは、ペットを飼育しているヒトの一部が深刻な悩みを抱える病気である。つまり、当該疾患の原因を詳細に把握し、治療法や予防法を改良していくことは、獣医学における永遠の課題なのだ。

 

冒頭のような背景の中、モントリオール大学は、過去10年間(2009~2019年)に付属動物病院を訪れた、尿失禁の猫35匹の診療記録を解析する研究を行った。なお、同研究では、神経学的な原因を有する症例は除外され、非神経学的な原因を持つ症例が対象となっている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆猫の非神経原性尿失禁に関する疫学◆
・約60%の症例で尿道の狭窄が原因となっていた
・その他に炎症、腫瘍、尿結石、異物が原因として挙げられる
・最も一般的な症状は、安静時の尿漏れであった
・次いで会陰部の汚れ、尿淋瀝、自発的な排尿が無くなることが続いた
・膀胱鏡検査と造影検査で診断が下されている確率は80%であった
・カテーテルによる処置を受けた猫の約60%で尿閉が解除された

 

上記のことから、猫の尿失禁(非神経原性)は、主に尿道の狭窄(閉塞)によって発症することが窺える。また、膀胱鏡検査と造影検査が有用であることも分かる。よって、当該疾患を診察する際は、尿道の狭窄の有無を画像診断で確認することが最優先だと言える。
読者の皆様は、尿失禁を呈する猫をどれくらいの頻度で診察しているだろうか。是非とも、今回紹介した研究の結果を日々の診療に活かして頂けると有り難い。

研究の目的に見合う完璧な診療記録が残されていた症例は18件だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34346241/


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