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犬の肝胆道系疾患を病理組織学的に解析した研究

投稿者:武井 昭紘

肝臓が腫大している時、肝酵素が上昇している時、肝臓のエコー源性が変化している時etc。この時、多くの獣医師が、細胞診や病理組織検査を一度は検討するものと推察する。そこで、気になることが一つ。時間も費用もかかり、そして麻酔のリスクも伴う病理組織検査の結果として、よく見られる所見とは一体何か。また、その所見が得られやすい犬種は。それを明らかにした研究が、ケンブリッジ大学らより報告された。なお、詳細は以下の通りである。

同大学らは、一次および二次診療施設から所定の検査センターへ提出された犬の肝臓組織4500件以上を対象にして、その症例データと病理組織学的所見を解析する研究を行った。すると、彼らの肝胆道系疾患はWSAVAの提唱する基準に従って23のカテゴリーに分類され、①反応性肝炎、②慢性肝炎、③肝細胞障害が最も一般的な疾患であることが判明したという。また、①はラブラドール・レトリバー、②はラブラドール・レトリバー、スプリンガー・スパニエル、コッカー・スパニエル、ウエストハイランド・ホワイト・テリア、③はシュナウザーとビションフリーゼが、発症リスクの高い犬種であるとのことだ。

上記のことから、病理検査の「前」に、該当する犬種では①②③の何かを疑うことができるのではないだろうか。そして視点を少し変えれば、時間も費用もかかって麻酔のリスクも伴う病理組織検査を断った症例では、今回紹介したデータを頼りに最も疑わしい疾患の当てを付けることができるとも言える。よって、小動物臨床に従事する獣医師の皆様におかれては、この4500件にも及ぶビックデータを日常診療に活かして頂けると幸いである。

本研究では、交雑種は反応性肝炎になるリスクが低いことも分かっております。

 

参考ページ:

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jsap.13354


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