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皮膚に発生した肥満細胞腫を抱える犬の治療反応性を示唆する新しいマーカー

投稿者:武井 昭紘

犬の肥満細胞腫は、小動物臨床で最も良く遭遇する皮膚腫瘍の一つであり、良性のものから悪性度が高い(致死的経過を辿る)ものまで多岐に渡ることが知られている。そのため、そのグレードを把握することが治療方針を決定する上で非常に重要であるとされているのだ。しかし一方で、このグレードだけでは、経過(予後)を完璧に判定することができないことも現実なのである。

そこで、オンタリオ獣医科大学は、皮膚や皮下に発生した肥満細胞腫に発現するベクリン-1(腫瘍細胞に過剰に発現していることがある物質)を観察して、担癌犬の経過との関連性を調べる研究を行った。すると、最初に発生した肥満細胞腫よりも再発した肥満細胞腫で多く、またリンパ節に転移する肥満細胞腫で更に多くベクリン-1が発現していることが判明したという。加えて、ベクリン-1が多く発現した肥満細胞腫を抱える犬における補助療法後の生存率は、「それ」が少ない犬の生存率よりも低いことが分かったとのことだ。

上記のことから、ベクリン-1は、当該疾患の犬の経過を予測するために有用なマーカーになり得ると考えられる。よって、今後、このマーカーが商業化されるとともに、ベクリン-1の発現を制御することで罹患犬の経過を良好できるか否かを検証する研究が進められることに期待している。

ベクリン-1は、ミトコンドリアや細胞質内のタンパク質を分解してアミノ酸にリサイクルする現象オートファジーに関する物質です。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34521293/


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