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特発性膀胱炎と診断された猫の10年間の経過・予後を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

猫の下部尿路疾患として良く遭遇する特発性膀胱炎(feline idiopathic cystitis、FIC)は、罹患猫とそのオーナーのQOLを低下させ、尿閉が併発すれば命の危機にも瀕する病気である。つまり、当該疾患を抱える猫の経過・予後をデータ化し、アップデートしていくことは、FICに対する診療レベルを向上するキッカケになると考えられるのだ。

 

冒頭のような背景の中、ノルウェー生命科学大学は、100匹を超えるFIC症例の中から、少なくとも10年間の状況(または死亡するまでの期間)を追跡できる猫50匹を抽出し、彼らの経過・予後を統計学的に解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が判明したという。

◆FICと診断された猫の10年間の経過・予後◆
・全体(50匹)の46%には再発が認められなかった
・全体の18%が1~3回、6%が4~6回、12%が6回以上、FICを再発した(再発の有無が確認できない症例を除く)
・10年後に生存していた症例は全体の12%であった
・下部尿路疾患に関連して亡くなった症例は全体の20%であった
・また6%はFICと診断された直後に安楽死されている
・約70%はFICが治癒している

 

上記のことから、FICから回復する猫が70%と多い一方で、20%にも及ぶ症例は予後不良であることが分かる。果たして、彼らを救う術はなかったのだろうか。今後、この20%に該当する猫の診療記録を分析し、死亡率を改善する治療法が考案されることを期待している。また、愛猫がFICと診断され安楽死を決断したオーナーの心理・思考を解析する研究が進み、「治癒するケースが多いFIC」について啓蒙するインフォームド・コンセントが確立することを願っている。

数回の再発までに留まる症例は10年後も生存している場合が多いとのことです。

 

参考ページ:

https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1098612X21990302


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