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犬の僧帽弁疾患の重症度と赤血球容積比(PCV)との関連性を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

増加した炎症性サイトカインの影響でエリスロポエチンの産生が低下あるいは同物資に対する反応の鈍化が起こり、心不全を抱えるヒトの30%(入院患者に至っては50%)で貧血が生じると言われている。また、その有病率は、心不全の重症度に応じて増えていくとされているのだ。そして、この貧血は生活の質(QOL)や生存率の低下、入院するリスクの増加に関与しているため、予後不良の指標と見なされているのである。しかし一方で、僧帽弁疾患を発症する個体が多い犬において、その重症度と貧血との関連性は詳しく分かっていないのが現状となっている。

そこで、イギリスの獣医科大学らは、過去13年間に粘液腫様変性を伴った僧帽弁疾患(myxomatous mitral valve disease、MMVD)の診察で2回以上動物病院を訪れた犬280匹以上を対象にして、米国獣医内科学会(American College of Veterinary Internal Medicine)が提唱するステージングと臨床検査所見(特にPCVを中心に)を比較する研究を行った。すると、ステージAの症例のPCVに比べてB1およびB2のそれが有意に低く、B1およびB2に比べてステージCのPCVが有意に高くなることが明らかになったという。また、ループ利尿薬(フロセミド)が投与されている症例を含めた統計解析では、PCVが体重標準化左室拡張末期径(normalised left ventricular internal diameters、LVIDDN)に反比例することが確認されたとのことである。

上記のことから、MMVDの犬のPCVは病期の進行に伴い低下していくこと、そして、その低下はステージCの症例が治療に反応した結果(ループ利尿薬の投与による血漿量の減少)で増加することが窺える。よって、今後、このPCVの変動がQOL、生存率、入院するリスクを左右するファクターとなるかについて検証が進み、加えて貧血に対する治療の必要性が検討され、犬の循環器診療のレベルが向上していくことを期待している。

ステージCのPCVはステージAよりも低いですが、統計学的な有意差は認められなかったようです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33599987/


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