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麻酔下での歯科処置を受けた犬猫における腎機能の変化を観察した研究

投稿者:武井 昭紘

犬猫に良くみられる歯周病に対する治療は、原則、全身麻酔下で実施されることが多い。そこで、疑問が浮かぶ。多かれ少なかれ、全身麻酔は腎臓に負担を掛ける。当該疾患の治療において、その程度は如何ばかりだろうか。

冒頭のような背景の中、、オレゴン州立大学およびアイデックスラボラトリーズ社らは、顕著な臨床症状は伴わないものの、麻酔下での歯科処置が必要だと判断された犬猫(それぞれ31匹、様々な年齢)を対象にして、処置前、処置直後(処置が終わって6時間後)、処置から1週間後における腎機能を観察する研究を行った。なお、同研究では、腎機能のバイオマーカーとして血清中クレアチニン濃度(Cr)、血清中尿素窒素濃度(BUN)、血清中対称性ジメチルアルギニン(SDMA)、尿比重(USG)、尿中タンパク質/クレアチニン比(UPC)が、腎組織の損傷を示すバイオマーカーとして血清中β-アミノイソ酪酸濃度、尿中シスタチンB濃度、尿中クラステリン濃度を採用している。すると、猫では処置直後にSDMAが上昇し(特に処置の時間が60分以上と長くなると上昇しやすい)、その値が高い程、処置から1週間後においても上昇が持続することが判明したという。

上記のことから、猫において歯科処置の時間が60分以上となるケースでは腎機能が低下することが窺える。よって、今後、この時間が長くなる要因を特定する研究が進み、その要因を減らす対策が考案され、腎臓に負担を掛けない歯科処置(全身麻酔を伴う処置をオーナーに提案するタイミングを含む)について議論されていくことに期待している。

本研究では、猫の症例の年齢が高いこと(処置前のCr、SDMA、USG)及び歯周病の程度が重いこと(処置前UPC)は腎機能の低下に関連していることも分かっております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34324590/


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