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ステロイドを吸入していた慢性気管支炎の犬に起きた世界初の皮膚疾患

投稿者:武井 昭紘

鼻の周囲に脱毛と鱗屑を呈した11歳のシェットランドシープドッグ(去勢オス)が動物病院を訪れた。どうやら痒みは無いか少ないようだ。病歴を見ると、慢性気管支炎の治療として、ステロイドの吸入を受けていたらしい。その経過は良好だったという。果たして、彼の身に何が起こったのだろうか。そして、その原因とは—–。

 

皮膚科検査に進む。ある病原体を狙ってか、病変の組織を深く削るようにサンプルが採取された。それを顕微鏡で覗くと、動くニキビタニを発見したとのことだ。フルララネルの経口投与で治療。8週間後には臨床症状が改善したという。その際の皮膚科検査では、ニキビタニは見つからなかった。ステロイドの吸入(1日2回)は継続された。3ヶ月に1回のフルララネルの経口投与とともに。以降15ヶ月、ニキビタニ症の再発はなかった。

これを受け、症例を発表した欧米の大学らは述べる。『吸入ステロイドによってニキビタニ症は発症した例は初めてだ』と。皆様が診察を担当する犬に、似たような経過を辿った症例は居るだろうか。もし居るならば、皮膚科検査でニキビタニの存在を確認することをお勧めする。

採材したサンプルにおいてサイトカインの状況を観察したところ、Th2に関与するものがダウンレギュレーション、Th1に関与するものがアップレギュレーションを起こしていたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34400383/


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