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ケモカイン療法~慢性腎臓病の猫に対する新しい治療法の開発~

投稿者:武井 昭紘

慢性的な尿細管障害および間質の線維化は猫の腎臓病を末期へと誘う病的な現象で、それを解決する有効な治療法は、現在確立されていないのが現状である。また、間葉系幹細胞による再生医療は、この病態を治療する可能性を秘めた手段として挙げられるのだが、高価で時間を要するといったデメリットが横たわっているのだ。一方、損傷した組織を再生する作用を有するとされるケモカイン(CXCL12)は、安価な注射薬として流通している。しかし、猫において、その効果は発揮されるか否かは分かっていない。

そこで、アメリカおよびインドネシアの大学・動物病院らは、慢性腎臓病(chronic kidney disease、CKD)モデルの猫の腎臓にCXCL12を投与し、腎臓に含まれるコラーゲンの量を測定する研究を行った。すると、薬剤を投与していないCKD対照群の腎臓ではコラーゲンの量が増加し、中用量(200ng)~高用量(400ng)の投与群ではコラーゲンの量が正常(CKDに陥っていない対照群と比較)に回復することが判明したという。

上記のことから、CXCL12(の腎臓内投与)は、CKDを患った腎臓の線維化を抑制することが窺える。よって、今後、CXCL12の皮下投与によって同様の効果が得られるか否かを検証する研究が進み、このケモカイン療法が一般の動物病院でも実践しやすい手法へと改変されていくことに期待している。

CXCL12の腎臓内投与をされた猫では、投与後9ヶ月間において副作用が認められなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33748219/


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