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前立腺癌あるいは前癌状態の犬における血管内皮増殖因子およびその受容体の発現を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

近年、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)と悪性腫瘍との関係性に注目が集まっている。組織の急速な増殖を目論む腫瘍組織では、その成長を助ける血管の新生が重要だとされているからだ。果たして、ある特定の悪性腫瘍が構成する組織では、VEGFおよびその受容体はどれ程発現しているのか。一つ一つ着実に解明していくことが、医学・獣医学の発展に繋がると思われる。

冒頭のような背景の中、ブラジルとオーストラリアの大学らは、様々な状態の犬の前立腺サンプルを用いて、因子としての①VEGF-Aおよび受容体としての②VEGFR-2の発現を免疫組織学的に調べる研究を行った。すると、正常な前立腺および肥大症のサンプルでは①②とも陰性から弱陽性を示し、proliferative atrophy(前立腺が癌化する前の状態)および前立腺癌のサンプルでは①②ともに高い発現レベルをに達していることが判明したという。また、前立腺癌の症例において②の発現レベルが高くなる程、または、前立腺組織に存在する血管の数が多くなる程、その個体の生存期間が短くなることが分かったとのことである。

上記のことから、②の発現レベルの上昇は、前立腺癌を抱える犬の予後を判定できるファクターになっていることが窺える。よって、今後、この発現レベルを制御することで症例の生存期間が延長するか否かについて検証する研究が進められ、「制御」する方法、即ち当該疾患に対する新しい治療法が確立されることに期待している。

本研究では、ヒトと犬の①および②は高い相同性を示すことも確認されております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34320239/


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