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呼吸困難を呈した猫が抱えていた世界初の悪性腫瘍

投稿者:武井 昭紘

5歳の猫(避妊メス)がイタリアの動物病院を訪れた。主訴は急性の呼吸困難、胸部レントゲン検査で胸水を認めたという。精査のため、高次診療施設(ボローニャ大学)を受診。結果、聴診で弱い心音および気管支肺胞呼吸音が聴取されるとともに、胸部レントゲン検査で胸水に加えて左側胸部(背側後方)に軟部組織の存在を確認。果たして、この症例に何が起きているのだろうか。

 

CT検査に進むと、軟部組織は左横隔膜脚より発生していることが判明。超音波ガイド下でFNAを実施したところ、間葉系の腫瘍細胞(悪性所見)が採取された。そこで、腫瘍組織の減量を目的として外科手術に臨んだとのこと。切除した組織の病理検査の結果は、未分化多形肉腫であった。

補助的に化学療法が適応されたものの、手術から10日で胸水が再発。術野の横隔膜は肥厚していたという。そして、2回目のFNAによって、再び間葉系の腫瘍細胞が採取された。術後1ヶ月、本症例は安楽死となった。

 

これを受け、大学らは、この猫を原発性の横隔膜腫瘍(Primary diaphragmatic tumours、PDT)として未分化多形肉腫を発症した「世界初の症例」と位置付けた。よって、無論極めてまれなのだが、万が一、胸水と横隔膜付近の軟部組織が目立つレントゲン検査所見を有し、且つ、呼吸困難を呈している猫に遭遇した場合は、CT検査およびFNAを検討して、PDTである可能性を模索することが望ましいと思われる。

PDTは、犬で3例報告されているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34158969/


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