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炎症性および腫瘍性中枢神経系疾患を抱えた犬の脳脊髄液中VEGF濃度

投稿者:武井 昭紘

血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor、VEGF)は、血管の透過性と新生を促進する分子で、血液の供給を強く求める腫瘍組織に発現していることのあるものである。そして、その一例が犬の頭蓋内腫瘍である。そこで、疑問が浮かぶ。中枢神経系を循環する脳脊髄液中にVEGFは漂っているのだろうか。また、頭蓋内腫瘍の存在で、VEGFの濃度は変動するのだろうか。

冒頭のような背景の中、ノースカロライナ州立大学は、神経系疾患を疑われ高次診療施設を訪れた犬120匹以上を対象にして、脳脊髄液(cerebrospinal fluid、CSF)に含まれるVEGF濃度を測定する研究を行った。すると、コントロール(①炎症性および②腫瘍性の神経系疾患ではない症例、約20%)と比べて、①または②を有する症例群においてVEGF濃度が高い値を示す個体が多いことが判明したという(①約92%、②約78%)。しかし、残念ながら、①と②の測定値に差異はなかったとのことである。

上記のことから、CSF中のVEGF濃度は、鑑別リストの中から①や②を疑うためのマーカーとして有用だと思われる。よって、今後、この①と②を鑑別できるマーカーが開発(または既存のものから発見)され、脳脊髄液検査が進化を遂げることを期待している。

頭蓋内腫瘍としましては、神経膠腫や脈絡叢の腫瘍などが含まれているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34105831/


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