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奈良公園 たった一人の鹿のお医者さん

投稿者:AsaT

奈良公園では誰もが知っている、国の天然記念物の「奈良のシカ」に出会うことができます。園内の鹿の命を守るため、唯一の専任獣医師として女性獣医師が活躍しています。

記事によると、園内と鹿の保護施設「鹿苑(ろくえん)」には約1400頭の鹿が居るとされ、「奈良の鹿愛護会」の丸子理恵さん(53)が治療にあたっています。鹿には犬猫と違い治療マニュアルがなく、鹿の生態を向き合いながら、最適な治療法を模索・確立してきたそうです。

丸子さんは愛知県日進町(現日進市)出身。自宅で犬やモルモット、セキセイインコなどを飼い、幼少期から動物が好きだったそう。大学卒業後は大手証券会社に7年勤めたが、「大好きな動物と関わる仕事に挑戦したい」と退職。2000年に岩手大農学部に編入し、獣医師の免許を取得。その後、 関西の動物病院などを経て18年4月、愛護会の獣医師に。「けがをしても放置されている野生動物を治療したい」との思いがきっかけだといいます。

治療頭数は年間約200頭。最多は車と衝突してけがをする鹿。「治療マニュアルがないため、初めは全てゼロから処置の仕方を考えた」と振り返る丸子さん。鹿の麻酔薬は、小動物用の薬をベースに、鎮静剤と鎮痛剤を調合して作成。包帯には、なめると嫌な味がする特殊なクリームを塗り、鹿が自ら外さないよう工夫しています。

治療は命がけで、19年2月、鹿苑で鹿に麻酔を注射しようとしたところ、走ってきた別の鹿に突き飛ばされて地面に頭を打ち、くも膜下出血を起こした。それでも、鹿に恐怖を感じたり、仕事を辞めようと思ったりしたことは一度もないそう。

19年9月には、日本野生動物医学会大会で、奈良公園でビニール袋を食べて死ぬ鹿が相次いでいる問題について論文を発表。胃に異物が詰まることで体に栄養が行き渡らず、栄養失調や免疫の低下で病気に感染し、死亡したと考えられる事例を紹介。プラスチックごみの問題が「奈良のシカ」に及んでいることを示し、大きな反響を呼びました。

丸子さんは「鹿の個性を観察しているとすごく面白い。同時に、鹿と人が共生する奈良公園の環境を守っていかなければ、との思いを強くする」と語り、「鹿の診療データは世界的にも貴重なもの。今後自分が編み出した治療法についても論文の形で発表していきたい」と話しています。

交通事故で左右の前脚を骨折し、治療中の鹿だ。全身麻酔の注射を打ち、麻酔が切れるまでの約1時間の間に、骨の状態の経過観察や包帯の交換などを行った。処置が終わると、鹿は愛護会の男性職員2人が持つ担架に乗せられ、鹿苑に運ばれていった。


https://mainichi.jp/articles/20210913/k00/00m/040/115000c

<2021/09/13 毎日新聞>

奈良公園 たった一人の鹿のお医者さん(写真と記事は関係ありません)

 

 

 

 


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