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ヒルドセラピー~上気道が閉塞したマスティフに適応された初めての治療法~

投稿者:武井 昭紘

頻脈、チアノーゼ、起座呼吸に喘鳴。急性呼吸窮迫を呈したマスティフ(10ヶ月齢、避妊メス)が北米の大学付属動物病院を訪れた。身体検査で頚部腹側(右側)の軟部組織の腫脹、下顎骨(吻側)の「あざ」。加えて、挿管時において異常を認める。舌下の血種を伴う軟部組織の腫脹で気管が右側に変位し、披裂軟骨が視認できなかったという。一体、彼女に何が起きているのだろうか。そして、彼女は命を取り留めることができるのだろうか。

 

CT検査に進む。冒頭に記した「腫脹」と「出血」によって、気管のみならず咽喉頭部も変位し、且つ、閉塞していることが判明。また、気管支拡張症の所見を確認。次いで、気管支肺胞洗浄液の細胞診では、好酸球性の気管支肺炎を裏付ける結果が得られた。挿管をしている状態は、プロポフォールとフェンタニルの投与で維持された。しかし、18時間が経過して「腫脹」の変化は僅かであった。そこで、上気道閉塞(upper airway obstruction、UAO)に陥った同症例を報告した北米の大学らは、ヒルドセラピーを選択した。つまり、医療用ヒルを用いて、貯まった血液の除去を試みたのだ。

44時間後、抜管できるまでに状態が回復。無事、マスティフは退院したという。

 

『犬のUAO(舌下の血種)にヒルドセラピーを適応した例は初めてである』

症例報告を行った大学らは、このように述べる。果たして、類似の病態を抱える犬にヒルドセラピーはどれ程の効果を発揮するのだろうか。今後、その有用性が検証されるとともに、同治療法の適応条件について議論が深まることに期待している。

本症例の凝固系は僅かに亢進していたとのことです(トロンボエラストグラフィ)。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34252261/


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