ズーノーシスとしても知られる犬のレプトスピラ症は、肝臓や腎臓に障害を起こして出血や黄疸を齎し、最悪の場合は罹患犬を致死的経過へと誘う感染症である。そのため、①当該疾患の発症に関与するリスクファクターや②疫学をアップデートしていくことは、大変に重要だとされている。
そこで、王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)は、2016年時点で大規模臨床データベースVetCompassに登録されていた90万匹以上の犬の診療記録を分析し、①および②を明らかにする研究を行った。すると、以下に示す事項が判明したという。
◆犬のレプトスピラ症の発症に関与するリスクファクターと疫学◆
・発生率は0.0008%(10万匹に0.8件)であった
・成犬(1歳~5歳未満)よりも1歳未満の犬で発症しやすい
・都市部に暮らす犬よりも地方で暮らす犬で発症しやすい
・貧困地域の動物病院で診断される確率が高まる
・コッカースパニエル、コリー、ラーチャーはレプトスピラ症と診断される可能性が高い
上記のことから、全体的には「犬のレプトスピラ症は稀」と言えるかも知れないが、特定の犬種では発症(診断)リスクが高いことが窺える。よって、該当する犬種の行動(感染源に近づく傾向はあるのか等)や体質(感染しやすくなる生物学的な特徴の有無)について解析する研究が進められ、ワクチン接種以外の新たな予防法が確立されることに期待している。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34057217/