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難産を主訴に救急外来を訪れた猫の特徴および経過に関する研究

投稿者:武井 昭紘

猫の難産は、母子ともに命の危機に瀕する救急疾患である。そのため、彼らの救命率を向上させるために、難産に至る原因やリスクファクターを詳細に把握し、治療法や予防法をアップデートしていくことが重要だとされている。そこで、ミシガン州立大学は、過去11年間に大学付属動物病院を訪れた猫の難産症例(35件)の診療記録を解析する研究を行ったという。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

 

◆難産を主訴に救急外来を訪れた猫の特徴および経過◆
・約70%が母体側、約30%が胎仔側に難産の原因があった
・しかし母体の低Ca血症と低血糖症は認められなかった
・症例の60%にあたる21件で内科療法を試みられた(成功率は約30%)
・症例の約37%にあたる13件で外科療法が適応された(内科療法に失敗した6件を含む)
・症例の20%にあたる7件は緊急処置を受けなかった
・合計で136匹の子猫が生れた
・そのうち58%は治療開始前、16%は内科療法後、26%は外科療法後に生まれた
・生存率は母体で94%、子猫で66%であった

 

上記のことから、難産となる原因が母体側に多いこと、子猫の死亡率が34%と高いことが分かる。よって、今後、その母体側の原因および子猫が死亡する理由を解明する研究が進められ、母子ともに無事に退院できる難産の治療法・予防法が考案されていくことに期待している。

58%の子猫が治療開始前に生まれたとのことから、分娩の兆候が表れてから何分・何時間後に治療を開始(検討)するべきか、その最適なタイミングについても議論されていくと、子猫の救命率が向上するのかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34124965/


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