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尿閉となった猫における膀胱穿刺の利点を考えた研究

投稿者:武井 昭紘

尿道閉塞(尿閉、urethral obstruction、UO)を起こした猫が動物病院を訪れた時、原因を探索する前に取るべき応急処置として「膀胱内の尿を取り出す」というものがあり、この処置を完遂するべく、①膀胱穿刺(decompressive cystocentesis、DC)または②尿道カテーテル法(urethral catheterization、UC)が適応されることが通例となっている。そこで、皆様に質問だ。目の前にUOとなった猫が居る。①を実施するか、はたまた②か。最初に選択する処置はどちらであろうか。膀胱内圧を下げ、罹患猫が感じている痛み・違和感を緩和して、②を行いやすくするために、①を選択するという先生はおられるだろうか。もし、おられるとしたら、その理論展開の正しさを検証したことはあるだろうか。

オハイオ州立大学が、ある研究を発表した。それによると、前述した理論展開を実際に検証したという。具体的には、UOに陥った猫80匹以上を、 ①の後に②を実施するグループと②を最初に選択するグループに分け、尿道カテーテルの挿入がしやすいか否かを数値化したそうだ(0〜4の5段階評価)。すると、両者の間に有意差は認められず、いずれも中程度に挿入しづらいことが明らかになったとのことである。

上記のことから、事前に①をすることで②が容易になることはないと言える。よって、UOの猫に(やや抵抗があったとしても)カテーテルが入るならば、①をする必要は無いと結論付けられる。果たして、皆様の印象はどうであろうか。やはり、①によって、②が容易になるといった感覚があるだろうか。UOの猫が運ばれてくる季節を迎えた今、改めて考えて頂けると幸いである。

カテーテルが入るまでの所要時間は、①を実施した場合で120秒、実施しない場合で132秒でしたが、統計学的な有意差は認められなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://avmajournals.avma.org/doi/abs/10.2460/javma.258.5.483


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