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熱に関連した疾患を発症した犬の状態を評価するツール

投稿者:武井 昭紘

梅雨が明け、太陽の光は強さを増す。その勢いは、外に居るだけでも眩暈がして、体温が急上昇するような感覚を覚える程だ。つまり、熱中症に細心の注意を払うべき本格的な夏を迎えたということである。そこで今年も、熱中症、いやもう少し意味を広げて熱中症から発展する危険のある「熱に関連した疾患(heat-related illness)」について、ある研究を紹介したい。なお、その研究とは、大規模症例データベースVetCompassを用いたものである。

 

イギリスの大学らは、まず過去年間に記録された同疾患の犬のデータ850件以上を解析した。すると、最も頻繁に観察される兆候は呼吸状態の変化(約69%の症例)および元気消失(約48%)で、死亡リスクを上げる兆候は神経症状や出血イベント(消化管出血など)であることが判明したという。また、これらの症例データを纏めると、熱に関連した疾患は以下に示す3つのグレートに分類できるとのことである。

◆熱に関連した疾患◆
1.軽度(熱中症):運動を辞めて涼しい場所に移動しても治まらない呼吸異常
2.中程度(熱疲労):冷却処置や輸液に反応しない、流涎、出血を伴わない嘔吐・下痢、単発の発作
3.重度(熱射病):中枢神経系の障害(2回以上の発作など)、肝障害、腎障害、消化管出血、点状出血、紫斑

 

そして、大学らは、論文内で重軽症に合わせた対応を表にして明記している
(The VetCompass Clinical Grading Tool for Heat-Related Illness in Dogsと称している)。その表が犬を襲う「熱に関連した疾患」への認識を改善し、治療方針の決定をスムーズにして、彼らの福祉を保護するだろうという期待とともに。果たして、同表(ツール)は熱に関連した疾患に苦しむ犬たちを救う原動力となるか。今後の動向に注視したい。

今回紹介したツールで評価される重軽症と、その個体の転帰(生死)につきましては、リンク先の論文をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33767275/


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