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心肺蘇生を受けた犬に起きている医原性の合併症について調べた研究

投稿者:武井 昭紘

心肺が停止した犬。緊急で心肺蘇生を要する状態だ。気道を確保して呼吸をアシスト。次いで、心臓マッサージ(本稿では開胸をしない処置とする)を行う。結果、救命はできなかった。この時、助けられなかった原因とは何だろうか。心肺停止に至った原因がそのまま、助けられなかった原因となったのだろうか。それとも、他に原因が—–。

 

冒頭のような背景の中、フロリダ大学は、心肺蘇生処置を受けた犬180匹を対象にして、同処置に続発する合併症の発生率を算出する研究を行った。つまり、心肺蘇生の過程自体が救命率の低下に繋がっている可能性を調べたのだ。すると、約50%の症例に肺出血、約9%に肝臓の損傷、約7%に胸腔や腹腔内の出血(血液量の15%を超える失血)が起きていることが判明したという。

これを受け、フロリダ大学は、前述した出血イベントが救命率を低下させる、あるいは、救命後に各臓器の虚血性障害や心肺停止の再発を齎す原因となる可能性があると結論付けた。よって、今後、出血イベントを最少限に留める心肺蘇生法を確立する研究が進められることに期待している。また、自己心拍が再開した暁には、肺および体腔内の出血の有無を確認するスクリーニング検査を実施することをお勧めする。

本研究に参加した犬の状態は、剖検と組織学的検査によって確認されているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33987841/


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