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愛犬の安楽死を決断するリスクファクターについて解析した研究

投稿者:武井 昭紘

安楽死。同処置は、苦しむ愛犬を見た、あるいは、彼らの飼育に関する問題に直面したオーナーにとって、心痛を伴うも大切な選択肢と言える。そのため、診療業務に携わる獣医師・動物看護師は、この安楽死に向き合わなければならない。どのような愛犬の状態が、オーナーに「決断」させることになるのか。そして、その決断の裏で、オーナーは何に苦しむのだろうか。これらを知り、苦しみを和らげる手段を検討し続けていくことが重要であると言える。

そこで、イギリスの大学らは、ファーストステップとして愛犬の安楽死を決断するリスクファクターについて解析する研究を行った。なお、同研究では、2016年の時点で大規模症例データベースVetCompassに登録され、且つ、亡くなっている約3万匹の犬(90万匹からランダムに抽出)が対象となっている。すると、約90%の犬が安楽死されていることが判明したという。また、「決断」に至るリスクを高めるファクターは、①QOLの低下(腫瘍をベースラインとしてオッズ比約16倍)、②問題行動(約11倍)、③脊髄疾患(6倍)であることが明らかになったそうだ。

上記のことから、オーナーは①~③に苦しみ、安楽死を決断していることが窺える。よって、今後、これらのファクターに関するオーナーの苦悩を明文化・図式化するプロジェクトが立ち上がるとともに、各疾患においてQOL低下を遅らせる方法や③を根治させる治療法を確立する研究が更に進められことに期待したい。加えて、一般の動物病院でも実践できる形式で、多種多様な問題行動を解決するプログラムが考案されていくこと願っている。

安楽死を決断したヒトの精神的な支えになる「獣医心理学」が発達していくことも願っております。

 

参考ページ:

https://www.rvc.ac.uk/Media/Default/VetCompass/210413%20Euthanasia%20Infographic.pdf

https://www.nature.com/articles/s41598-021-88342-0


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