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肥大型心筋症の猫における血栓形成メカニズムの一端を解明した研究

投稿者:武井 昭紘

心筋症を抱える猫の左心房内にて、血栓が形成されることがある。また、その血栓が大動脈などの大きな血管に詰まって塞栓症(aortic thromboembolism、ATE)を起こすことがあるのだ。しかし、このATEの発症メカニズムは、未だ全容が解明されていないのが現状である。一方で、左心房の機能・構造に異常を認めるヒトでは、フォンウィルブランド因子(von Willebrand Factor、vWF)が血栓の形成に関与していると言われている。

そこで、王立獣医科大学らは、心筋症に罹患した猫の心内膜におけるvWFの発現を調べる研究を行った。すると、臨床上健康な猫および無症候性の心筋症を抱える猫に比べて、臨床症状と左心房拡大を伴う心筋症の猫ではvWFをより多く発現していることが判明したとのことである。加えて、vWFは左心房の内膜と血栓を繋げるように存在し、その血栓の構造を維持する上で重要な役割を果たしていることが分かったというのだ。

上記のことから、vWFは左心房内での血栓形成に深く関与し、ATE発症の引き金になっていることが窺える。よって、今後、心内膜に発現するvWFを阻害する(を分解する)動物用の薬剤が開発され、その有用性が検証されていくことに期待している。そして、同薬剤が心筋症を抱える猫の予後を改善する未来が訪れることを願っている。

薬剤の開発とともに、vWFの発現に関わる遺伝子を制御する治療法も考案されると、猫の循環器診療のレベルが更に向上していくかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33925795/


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