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腹水を伴うアナフィラキシーを起こした犬の特徴を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

ルイジアナ州立大学の研究によると、死亡率15%を示したアナフィラキシーの犬の母集団において、65%以上の症例が腹水を呈していたという。つまり、当該疾患には腹水が伴うことが多いと言えるのだ。では、どのような原因によって起きたアナフィラキシーに腹水は生じるのだろうか。それを明らかにすることは、腹水を主な所見とする症例の類症鑑別を再考するキッカケになると思われる。

 

そこで、アメリカの獣医科大学および動物病院らは、腹水を伴うアナフィラキシーに陥った犬16匹を対象にして、彼らの特徴を分析する研究を行った。すると、以下に示す事項が判明したとのことである。

◆腹水を伴うアナフィラキシーを起こした犬の特徴◆
・過去の病歴からワクチン接種および昆虫との接触が原因と思われる症例がいた
・30%を超える症例では病歴から推測できる(既知の)原因はなかった
・意識障害、嘔吐、下痢、虚脱などが一般的な症状であった(44~88%の症例)
・紅斑や蕁麻疹を認める症例もいた(それぞれ13%の症例)
・腹水の性状は、PCV29%、TP3.8g/dLであった
・75%の症例で胆嚢壁に異常所見を認めた(超音波検査)
・初診時の収縮期血圧は70mmHg(30-210mmHg)であった
・血液ガス分析では、アシドーシス、塩基の欠乏、乳酸濃度の増加を示した
・血液検査では、ALTおよびGGTの上昇を認めた
・2匹が安楽死(約13%)となったものの、14匹は無事に退院した

 

上記のことから、腹水は、肝臓または胆嚢に障害をきたした場合に生じる可能性があるものと推察できる。よって、今後、これらの障害を治療することで症例の経過が良好になるか否かを検証する研究が進み、ルイジアナ州立大学の研究における死亡率15%、今回紹介した研究における死亡率13%をゼロに近付ける治療法が考案されることを期待している。

50%の症例は、発症前に屋外にいたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33913584/


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