近年、腹腔鏡手術が小動物臨床に広まっている。その理由は、何と言っても、切開創を最小限に抑えた「低侵襲性」が利点となっているからであろう。しかし、この腹腔鏡手術にはデメリットがある。術野が2次元の画像になってしまうというデメリットが。つまり、肉眼で視認する際の3次元の術野とは異なっており、奥行きが失われた画像になってしまうのだ。
冒頭のような背景の中、カリフォルニア大学は獣医療で初めて、3次元の画像を構築するスコープを用いた「ある腹腔鏡手術」を行ったことを発表した。なお、症例は、右の副腎に発生した腫瘍によってクッシング症候群を抱えた、8歳齢のボストン・テリア(雄)。彼の腫瘍化した副腎を摘出するために、同手術は実施されたという。また、幸いなことに、その副腎腫瘍は良性。手術後、一時的にステロイド剤の投与が必要であったものの左の副腎が正常に機能し始め、多食多飲といった症状が消失したとのことである。
果たして、このシステムは、小動物臨床に広く普及するだろうか。有用性は充分だが、その分、高価であることがネックになるかも知れない。よって、今後、一般の動物病院でも導入できる価格帯の「3D腹腔鏡」が開発され、犬猫に提供する外科手術の技術レベルが向上することを期待している。
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