ニュース

FORLに罹患した猫における口腔内微生物叢を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

猫の破歯細胞性吸収病巣(Feline odontoclastic resorptive lesion、FORL)は、歯を破壊するように進む吸収に伴って、強い痛みが生じる病気である。しかし、その病因論は充分に確立されておらず、口腔内細菌叢の変化も含めた多くの因子によって発生するのではないかと言われている。つまり、この「因子」を探し当てることが、FORLに対する診療のレベルを向上させることに繋がるのだ。

そこで、ヨーロッパとアメリカの大学らは、①FORL症例40件と②臨床上健康な猫25匹を対象にして、両者の口腔内微生物叢を比較する研究を行った。なお、同研究では、得られたサンプルを用いてPCR(16S rRNAの増幅)および遺伝子配列の決定が実施されている。すると、主な細菌種として6属(ベルゲイエラ、カプノサイトファーガ、ランプロペディア、モラクセラ、ポルフィロモナス、トレポネーマ)が検出されるとともに、①は2つのサブグループに分かれることが判明したという。具体的には、FORL-1というグループは、②に比べてポルフィロモナスが多く、カプノサイトファーガとランプロペディアが少ないとのことである。対して、FORL-2というグループは、②の細菌叢に似通っていたそうだ。

上記のことから、FORL-1に属する個体では、口腔内細菌叢の変化が当該疾患の発症に関与している可能性が示唆されたものと思われる。よって、今後、各サブグループの食餌内容、重症度、進行スピード、治療反応性などが解析され、FORLと口腔内細菌叢の関連性が明らかになっていくことを期待している。

ランプロペディアはリン酸とカルシウムの代謝に局所的に関与する可能性があると、同大学らは述べています。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33856291/


コメントする