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短頭種特有のシッポの形状に関与する遺伝子と彼らの鼻の長さ

投稿者:武井 昭紘

2018年12月、カリフォルニア大学らが発表した研究によると、細胞内シグナリングの一つ、WNT経路に関与するDISHEVELLED 2 (DVL2)遺伝子のフレームシフトは、ヒトのロビノー症候群を起こすDVL1やDVL3のフレームシフトに類似しており、ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリアに見られる「特徴的なシッポの形状」に関係しているという。そこで、この事実を発展的に捉えてみると、ある仮説が立てられる。頭部、顔面、四肢、椎骨などに奇形を生じるロビノー症候群と短頭種の「独特な骨格」には、何らかの繋がりがあるのではないだろうかという仮説が。つまり、DVL2遺伝子の変異を詳細に解析することは、短頭種の成り立ちを理解し、彼らの健康管理を見直すキッカケになるのではないだろうかと考えられるのだ。

そのような背景の中、フィンランドとアメリカの大学らは、15品種(短頭種が中心)と混血種を対象にして、DVL2遺伝子の変異と骨格的特徴との関連性を調べる研究を行った。すると、①変異が無いあるいは②ヘテロ(変異した遺伝子と変異していない遺伝子が対になった状態)の個体に比較して、③ホモ(対になった遺伝子の両方に変異を起こした状態)の個体において、鼻が短くなるような骨格の変化が強く現れることが判明したとのことである。また、アメリカン・スタッフォードシャー・テリアでは、①および②に比べて、③に「より顕著」な尾椎の奇形が認められることが明らかになったという。

上記のことから、DVL2遺伝子の変異は、短頭種の独特な骨格の形成に関与していることが窺える。よって、今後、短頭種気道症候群の有無と同変異との関連性を調べる研究が進められるとともに、短頭種気道症候群や椎骨の奇形に苦しむ短頭種を減らすべく、②や③の個体を除外したブリーディングを推奨するガイドラインが作成されることを願っている。

調査対象となったイングリッシュ・ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリアの全例に、DVL2遺伝子の変異(ホモ)が起きていたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33599851/


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