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犬が発症する謎の血管障害アラバマロットの臨床病理学的特徴を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

アラバマロット(cutaneous and renal glomerular vasculopathy、CRGV)は、血管障害に起因する皮膚病から始まり、最終的には急性腎障害(acute kidney injury、AKI)を起こす犬の致死性疾患である。しかし、当該疾患の原因や疫学については不明な点が多く、広く認められた有効な治療法・予防法が確立されていないのが現状となっている。

 

そこで、イギリスの大学と動物病院らは、CRGVをより深く理解するべく過去7年間を遡り、罹患犬170匹以上の診療記録を解析する研究を行った。すると、以下に示す臨床病理学的な特徴が明らかになったとのことである。

◆CRGVの臨床病理学的特徴◆
・90%以上の症例が11月〜翌年5月までに発症していた
・約8%の症例は皮膚病のある犬(AKIではない)と接触していた
・80%以上の症例の初診時に四肢の皮膚病変が見付かっている
・皮膚病変が出現してから3日でAKIを発症していた
・約84%の症例に血小板減少症例が認められた
・約19%の症例に神経症状が認められた
・約7%の症例に全身症状が認められた
・50%を超える症例にNSAIDが処方されていた(AKIの診断以前に)

 

上記のことから、秋から春にかけて、皮膚病で来院した犬が数日後にAKIに陥った場合は、CRGVが疑わしいと思われる。また、半数の症例にNSAIDが使われていることから、その使用の是非も議論する必要があるだろう。仮に、今後検証が進み、使うことでAKIを発症しやすいとなれば尚更だ。果たして、CRGVの主たる原因とは。そして、それを治療あるいは予防する手段とは。研究の積み重ねが実を結ぶことを願っている。

神経症状は、初診時または入院時に確認されるとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33829498/


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