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犬の免疫介在性血液疾患に対する血漿交換療法の有用性を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

血漿交換療法(Therapeuticplasma exchange、TPE)は、罹患動物の血漿を入れ替える性質上、血液に含まれる自己抗体、活性化した補体を骨髄抑制を伴うことなく取り除くことができる技術だとされている。つまり、免疫介在性の血液系疾患(immune-mediated hematological disorders、IMHD)を発症した犬にTPEを適応すると、自己の赤血球や血小板を攻撃する免疫応答を抑制できるという仮説が立てられるのだ。これは、免疫抑制剤が効かない症例にとって、朗報になるのではないだろうか。

 

そのような背景の中、スイスのベルン大学は、IMHDと診断された犬140匹以上を対象にして、TPEの有用性を検証する研究を行った。なお、罹患犬は、①TPEを受けたグループと②受けていないグループの2つに分けられている。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆IMHDの犬に対するTPEの有用性◆
・②よりも①では免疫抑制剤に対して抵抗性を示す症例が多い
・①の80%以上にTPEが奏効した(完全寛解または部分寛解)
・②の70%に既存の治療法が奏効した
・①の80%以上が生存(退院)した
・残りの症例は斃死または安楽死で亡くなった
・①の35%に合併症が発生した

 

上記のことから、TPEは、既存の治療法に劣らない成績を誇ることが窺える。しかも、症例の大部分は、既存の治療法が効かない個体だ。よって、まだまだ一般的とは言えないTPEが、将来的に数多くのIMHDに罹患した犬、中でも免疫抑制剤に抵抗性を示す症例の命を救う治療法として普及することを願っている。

溶血性貧血と血小板減少症、それぞれの割合は文献をご参照下さい。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33571376/


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