ニュース

慢性炎症性腸疾患の猫に起きる腸線維症の臨床的意義を明らかにする研究プロジェクト~

投稿者:武井 昭紘

猫の慢性炎症性腸疾患(chronic inflammatory enteropathy、CIE)は、文字通り慢性的な消化器症状を呈して罹患猫を衰弱させ、オーナーに安楽死を決断させることもある病気である。それにも関わらず、当該疾患の原因は不明な点が多く、経験的に症状を軽減させると「知られている」食事療法、抗生剤、免疫抑制剤での治療を適応することが一般的となっている。しかし、残念ながら、それらの治療に反応しない症例が存在していることも事実なのだ。つまり、原因を解明する、あるいは、治療が奏効しない症例を分析することが、獣医学が克服すべき課題なのである。

そのような背景の中、イギリスの王立獣医科大学(RVC)は、治療が奏効しない症例の謎に迫る研究を行うことを発表した。なお、同大学によると、CIE症例の腸生検で度々報告される「腸線維症」に着目し、この病態の特徴を明らかにし、有病率を算出するとのことである。そして、それらと、治療反応性や転帰との関連性を解析するとともに、腸線維症の初期を捉える組織学的診断を確立するという。

現在のところ、腸線維症の臨床的意義は分かっていない。果たして、RVCの研究がその意義を明らかにする日は来るのだろうか。成果が報告される未来を期待し、動向に注視していきたい。

本研究が、CIEに対する新たな治療法の開発に繋がることを願っております。

 

参考ページ:

https://www.rvc.ac.uk/study/postgraduate/mres/MRes-The-characterisation-and-clinical-significance-of-intestinal-fibrosis-in-cats-with-chronic-inflammatory-enteropathy


コメントする