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交通事故に遭った犬の予後を内分泌学的に分析した研究

投稿者:武井 昭紘

交通事故に遭った動物を診たことはあるだろうか。あるとするならば、彼らは無事、一命を取り留めただろうか。あるいは、誠に残念ながら、亡くなってしまっただろうか。生と死。事故で負った外傷の程度の差こそあれ、助けられる命と助からない命は、どこで線が引かれているのだろう。そして、それを知る手掛かりとは—–。

イタリアの動物病院が、ある研究を行った。それによると、交通事故に遭った犬の予後を内分泌学的に解析したという。具体的には、彼らの尿中コルチゾール対クレアチニン比(urinary cortisol-to-creatinine ratio、UCCR)および甲状腺ホルモン(tT4、fT4)を、事故から24時間以内に測定したそうだ。すると、事故以外の理由で動物病院を訪れた犬と比べて、事故に遭った犬のUCCRは有意に高く、fT4は有意に低かったことが判明したとのことである。また、UCCRと甲状腺ホルモンは生死を分かつファクターになっており、生き残る犬よりも、亡くなってしまう犬においてUCCRはより高く、甲状腺ホルモンはより低かったという。

上記のことから、UCCRおよび甲状腺ホルモンは、交通事故に遭った犬の予後を判定するマーカーになり得ることが窺える。よって、今後、これらの数値を治療によって改善させれば生存する個体が増えるのかについて検証され、彼らの救命率が向上していくことを期待している。

本研究ではTSH(甲状腺刺激ホルモン)も測定されておりますが、事故症例の生死と関連していなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32645514/


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