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軟部組織肉腫に罹患した猫の予後を判定するファクターに関する研究

投稿者:武井 昭紘

猫の皮膚および皮下に発生する軟部組織肉腫(soft tissue sarcomas、STS)は、様々な組織学的グレートを伴って、四肢端を含めて体の随所で認められることがある悪性腫瘍である。また、このSTSは浸潤性が高く、マージンを確保しにくいことから再発を繰り返し、長期的な管理を余儀なくされる特徴を有している。そのため、どのような因子が予後を悪化させるのかについて詳らかにすることが重要だとされている。

 

そこで、イギリスの王立獣医科大学らは、STSの猫45例以上の診療記録を追跡して、彼らの予後をデータ化する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆猫のSTS症例の予後を左右するファクター◆
・性別、品種、手術歴(不妊去勢手術)と予後に関連性はない
・主に中年齢以降の個体に発生する
・腫瘍細胞における有糸分裂指数と組織学的グレードが生死を分ける
・悪性度が生存期間の長さに有意差をもたらす

 

上記のことから、①病理組織学的な所見と②悪性度が、STSに罹患した猫の予後を左右していることが分かる。よって、今後、本研究で用いた①および②を評価するシステムが世界的に普及し、オーナーと獣医師が予後に応じた症例との向き合い方を綿密に相談できる未来が訪れることを期待している。

生存期間(中央値)は、低悪性度で約900日、中等度で約510日、高悪性度で約280日であったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32713240/


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