ニュース

犬のインスリノーマを培養して酵素の発現状態を観察した研究

投稿者:武井 昭紘

犬のインスリノーマは、膵臓に存在しているβ細胞が腫瘍化してインスリンを過剰に分泌することで、生命機能に危機を齎すほどの低血糖を発症する疾患として知られている。そのため、この低血糖を抑止するべく、罹患犬には外科手術や内科療法(食事療法および化学療法を含む)を適応することが通例となっている。つまり、当該疾患の治療において重要なポイントの一つに、「血糖値のコントロール」があるのだ。言い換えると、それを実現するために、罹患犬が低血糖に陥るメカニズムの解明が求められているのである。

そこで、カンザス州立大学は、①臨床上健康な犬と②インスリノーマの犬から膵臓組織の一部を採取して10週間培養し、糖代謝に関わるグルコキナーゼとヘキソキナーゼIの発現を調べる研究を行った。すると、①由来の正常な細胞よりも②由来の腫瘍細胞において、グルコキナーゼが過剰に発現していることが判明したとのことである。

上記のことから、そして、グルコキナーゼ活性化薬が糖尿病の治療に用いられている事実から、グルコキナーゼはインスリノーマを抱える犬で見られる低血糖に関与している可能性があることが示唆されたものと考えられる。よって、今後、グルコキナーゼ阻害薬が開発され、インスリノーマに対する有効性が検証されていくことに期待している。

インスリノーマ由来の細胞は増殖せずに10週間生存し、インスリンを分泌したとのことです。

 

参考ページ:

https://avmajournals.avma.org/doi/abs/10.2460/ajvr.82.2.110


コメントする