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VetCompassが明らかにした犬のアジソン病に関する疫学

投稿者:武井 昭紘

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)は、腎臓の近傍に位置する副腎の皮質で産生されるホルモンが不足することで発症し、時に緊急で治療を要することもある内分泌疾患である。そのため、当該疾患に関する疫学を詳細に把握することは、小動物臨床に携わる獣医師にとって大変に重要なことである。

 

そのような背景の中、王立獣医科大学は、大規模症例データベースに登録された犬90万匹以上を対象にして、アジソン病の疫学を明らかにする研究を行った。すると、以下に示す事項が判明したという。

◆犬のアジソン病に関する疫学◆
・有病率は0.06%であった
・スタンダードプードルの有病率は2.3%にも昇る
・初診時の年齢は平均5.2歳
・70%以上の症例が嗜眠、食欲不振、嘔吐を呈する
・4歳以下と比べて、4~9歳齢の個体は約2倍発症しやすい
・他犬種と比べて、スタンダードプードルは約51倍、ラブラドゥードルは約7倍、ウェスティは約6倍発症しやすい
・76%の症例が緊急対応を必要としていた

 

上記のことから、アジソン病を発症しやすい3犬種を飼育するオーナーには、当該疾患について啓蒙したり、定期的な健康診断を薦めることが望ましいと思われる。また、4歳齢以上の犬を連れて動物病院を訪れたオーナーに前述した症状の有無を確認することが、アジソン病の早期発見に繋がるものと思われる。読者の皆様は、犬種、年齢、症状が本研究と一致する犬を診察しているだろうか。もし、お心当たりがあるという獣医師は、その子がアジソン病を発症しているか否かを鑑別して頂けると幸いである。

ラブラドールは、他犬種と比べて、1.3倍「発症しにくい」とのことです。

 

参考ページ:

https://www.rvc.ac.uk/Media/Default/VetCompass/210209%20Addisons%20infographic.pdf


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