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リドカイン塗布から喉頭の反応性が低下するまでの時間を計測した研究

投稿者:武井 昭紘

『まだ反応するな。』
局所麻酔薬のスプレーを喉頭部にかけた猫を見て思う。果たして、この薬は効いているのか甚だ疑問である。非常に挿管がしづらい—–。

日々の忙しい診察の中で、このようにかんじたことのある新人獣医師は、どれくらい居るだろうか。そして、効果を疑っているタイミングは、スプレーを使用してから、どれくらいの時間が経った頃だろうか。もしかしたら、薬の効果が発現する前に挿管している。そう考えると、一筋の光が見えてくるかも知れない。

アメリカの獣医科大学らが、ある研究を行った。なお、それによると、不妊去勢手術に臨む交雑種の猫100匹以上を対象にして、前投与薬の使用後、披裂軟骨にリドカインを塗って挿管をし、その反応(軽度から重度の3段階)を観察する研究を行ったという。すると、塗布から5秒後に挿管したグループに比べて、30秒後および45秒後に挿管したグループで反応しない猫の数が有意に増え、45秒後と60秒後では重度の反応を示す猫が居ないことが明らかになったとのことである。

上記のことから、同大学らは、気管チューブを用いて吸入麻酔をする猫にリドカインを使う場合、塗布から「45秒」待って挿管することが望ましいと結論づけた。45秒。読者の皆様は、この時間を待っているだろうか。もし、『いいえ』と答えた獣医師は、少し気長に、最適なタイミングが訪れるのを待ってみるとスムーズな挿管ができるようになるかも知れない。

本研究に参加した全ての猫に、麻酔や手術による合併症は起きていないとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33112192/


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